3776米

nawoki2007-07-23


小雨というか、みぞれのような雨がしたたり、真っ暗な闇の中
ガタガタ震えながらその時を待った。


まわりは霧なのか雲なのか見分けがつかない煙まみれで何も見えない・・・。
やはり拝むことは無理なのかな・・・。あきらめも少し入る中、
ときおりの強い風がその煙をはらってくれる。
赤らんできた目の前には雲のじゅうたんと、
真正面からは見たこともない大きさのまんまるの太陽が、
また見たこともない赤い色を放ちながら昇ってきた。
大雲海がはっきりと見えてきて、でかすぎる太陽がゆっくりと姿を現す。
神々しいその姿に、集まった登山者たちの歓声をよそに、
自分の中ではシンとしたまわりを何も感じない不思議な感覚が満たした。
正面からまぶしい光を受けて、ずーっとボーっと見ていた・・・。
最高の景色を見ると人は放心してしまうのかもしれない。
ありがとう!!!!! 富士山最高!!!!!!


というわけで今日は月曜日なのです。
今起きました。
会社からの電話で。
せっかく休みとったんだから、もうちょっとゆっくり休ませてくれてもいいのに・・・。
足はパンパンで立つのも座るのも大変。
本当に休みにしといてよかった。


土曜日の朝、家を出るときは小雨のパラつくなんともいやな天気。
集合場所は人でごった返していて、色んなツアーのバスが待っていた。
自分達のツアーもなんとか見つけて出発。
5合目に着くと不思議と晴れていた。
雲の上に出たのだろうか。
ツアーの説明を色々聞いて、まずはお昼ご飯。
なんとなく頭がボーっとして、クラクラする。
5合目と言えども2200mくらいはあるから、ここでも高山病の危険性はあるのかも。
金剛杖を購入し、いざ出発!
ツアーは80人くらいが列になってガイドさん一人が先頭に立って昇る方式。
でも山小屋までで、そこからは自由行動。

6合目までは余裕・・・7合目までが長い長い。8合目まではいつになったらつくのーって感じ。
道は砂と砂利から岩場が増えてきて、傾斜もだんだんと急になっていく。
結局出発してから7時間くらいかかって山小屋に到着。
心配した天気も小雨程度でなんとかしのぎきった。到着してからは大きく崩れたのでラッキーだった。
山小屋に着いたのは夜の8時くらいかな。
自分と奥さんとAさまの3人チームは心配した高山病もなく、無事に到着できた。
山小屋でカレーを食べて、次の日の朝食お弁当をもらって、すぐに就寝。
就寝といえども就寝できず。
ものすごくツメツメで押し込められてツタンカーメンのミイラのような姿勢でも、隣の人とぶつかる狭さ。
まったく身動きがとれないので当然仮眠程度で寝られない。
9時くらいに布団にはいったのに、すぐに目が覚めた。
予定では山小屋の人が12時半くらいに起こしてくれるということだったが、
チームのメンバーも寝れないのは同じらしく、早めに出発してしまおうということになった。


ここからは自己責任登山。
ガイドさんはいない。
週末でたくさんの人が登ってきていて、泊まった山小屋の休憩所は人の渋滞になっていた。
「ご来光を拝めなくなるので、すぐ出発ですよー!」という他のツアーのガイドの叫び声を聞いて、
わがチームもちょっとあせりだす。
ここまできて渋滞にハマるなんてカンベンしてほしい。
でもガイドさんがいないので、いざ登り出すとペースがつかめない。
自分が先頭で間に奥さん、Aさまの順で昇り出すが真っ暗で前は見えないし、
空気は薄いし、早く登らないとというあせりでチームワークが乱れ気味になる。
天気は安定せず、小雨に混じってみぞれも降り出す。
登ったとしてもご来光は拝めるのだろうか・・・。

罰ゲームのような修行のような行軍が続く。
でもふと空を見上げると、満点の星空。
おびただしい数の星があふれていた。
ニュージーランドマウントクックで見た星空に似ていた。
つらいなかでもちょっとしたご褒美をもらえたかな。

富士山最後の山小屋を越えると9合目。いよいよ空気は薄く、道は岩場で急勾配。
道端には無理をしたのか、登山者のダウンした姿が目立つようになる。
さながら地獄の様相。
ヘッドライトの明かりにぼやけて鳥居が見えた。
頂上にやっとの思いで到着。チームで握手!
着いたのは明け方の3時くらいかな。
泊まった山小屋からは4時間くらいかかった計算になる。


雨は激しく、寒さは余計に厳しくなる一方。
日の出予定は4時半。
頂上の山小屋が営業を開始したとき、
運よく席を確保してもらえて味噌ラーメンをそそった。
明らかにインスタントだったけど、人生で一番うまい味噌ラーメンだった。

そしてご来光。

登頂記念の焼印を金剛杖に入れてもらって、
朝ご飯のお弁当を食べて、いざ下りへ出発。
これがまたつらいつらい。

登りを正味11時間くらいかかったところを一気に4時間くらいで降りてくるんだから。
登山道とは違う道で、砂利と砂と小さい岩の道をひたすらジグザクに降り続ける。
太もも、ふくらはぎはぱんぱんになるし、膝は痛いし、足の裏は麻痺してくるしで。
ここで装備の足りない人は余計につらそうだった。
軽装の外国人などはスニーカーがボロボロでぶったおれていた。

寝不足もあいまって、最後はフラフラになりながら、
やっとの思いで5合目に到着。
帰りは河口湖の銭湯に寄ってさっぱりしてから帰った。


こんな過酷な登山をやり切れたのもチームの皆さまのおかげです。
ありがとうございました。
奥さんは途中で泣き出すかと思ったけど、よく乗り切ってくれたし、
Aさまはいつの間にか体力増強されていて、いっぱい心配してくれて気を遣ってくれた。
チームで山登りって楽しいかも。
いきなり日本一の山はハードル高かったけど、もう少しおとしてまた行きましょう。

人としても一回り大きくなれた3776メートルの旅でした。